散骨は違法ではないのか ― 法的な位置づけと散骨ガイドラインの要点

最終更新日:2026年10月31日

霧のかかった静かな海面
写真:Noorulabdeen Ahmad / Unsplash(イメージ)
この記事の調べ方
2026年10月31日に、墓地、埋葬等に関する法律、厚生労働省掲載の「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」のPDF本文、町田市・八王子市の改葬手続きの案内を確認しました。専門家への相談や個別ケースの検討は行っていません。ほかに公式情報を読み比べてわかったこともまとめています。

「海にお骨をまくのは、法律に触れないのだろうか」。散骨を考え始めたとき、多くの方が最初に抱く疑問です。この記事では、公的な資料に書かれていることだけをもとに、散骨がどのように位置づけられているかを整理します。

この記事について
当サイトは法律の専門家ではありません。ここでは公開されている法令と公的な資料の内容を紹介しており、個別のケースについて「問題ない」「違法になる」と判断するものではありません。具体的なご事情がある場合は、お住まいやお墓のある自治体の窓口、または弁護士などの専門家にご相談ください。

散骨を直接定めた法律はあるのか

日本には、遺体の埋葬や火葬、お墓について定めた「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号。以下「墓地埋葬法」)があります。一方で、遺骨を海や山にまく「散骨」について、それ自体を許可したり禁止したりする条文は、この法律の中にはありません。

そのため、散骨は「法律で明確に認められている」わけでも「法律で明確に禁止されている」わけでもない、という状態が長く続いてきました。こうした状況のなかで、散骨を適切に行うための目安として作られたのが、後で紹介する散骨のガイドラインです。

墓地、埋葬等に関する法律の考え方

墓地埋葬法の第1条は、法律の目的を、墓地や納骨堂、火葬場の管理と埋葬などが、国民の宗教的感情に適合し、公衆衛生などの面から支障なく行われることとしています。

第4条では、埋葬や焼骨の埋蔵は墓地以外の区域で行ってはならないと定めています。ここでいう「埋蔵」は、焼骨を墳墓に納めることを指します。つまり、自宅の庭などに遺骨を埋めることは、この条文に関わってきます。

散骨は、遺骨を土の中に「埋める」のではなく、粉状にして「まく」行為です。後で紹介するガイドラインは、散骨を「墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法」で行うものと定義しています。この定義からも、散骨が墓地埋葬法の想定する「埋蔵」や「収蔵」とは別の行為として扱われていることが読み取れます。

ただし、これは「どのような方法でも自由にまいてよい」という意味ではありません。ガイドラインは、墓地埋葬法に加えて刑法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、海上運送法、民法などの関係法令や、地方公共団体の条例を守ることを求めています。

出典:墓地、埋葬等に関する法律(e-Gov法令検索)/散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)。URLは記事末尾に記載。

「散骨に関するガイドライン」とは

「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」は、令和2年度の厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」の研究報告書に収められたものです。厚生労働省のウェブサイトに資料が掲載されています。

このガイドラインは、散骨を事業として行う人(散骨事業者)と、散骨事業者を会員とする団体(散骨関係団体)に向けて書かれています。目的は、散骨が関係者の宗教的感情に合い、公衆衛生などの点からも適切に行われることとされています。

研究報告書の一部として公表された資料であり、法律のように罰則を伴うものではありません。それでも、事業者がどのような点に配慮すべきかを示した公的な資料として、散骨事業者を選ぶときの参考になります。

ガイドラインの要点

ガイドラインの内容を、遺族の立場から知っておきたい点に絞って、当サイトの言葉でまとめます。正確な文言は原文をご確認ください。

散骨の定義

墓地埋葬法に基づいて適法に火葬された後の焼骨を粉状に砕き、墓地埋葬法が想定する埋蔵や収蔵以外の方法で、陸地や水面にまいたり投下したりする行為を「散骨」としています。前提として、法律に沿って火葬された遺骨であることが求められています。

散骨を行う場所

海洋で行う場合は、海岸から一定の距離以上離れた海域で行うこととしています。具体的な距離は数字で決められておらず、地理的な条件や海の利用状況など、実情を踏まえて適切な距離を設定するとされています。陸上で行う場合は、あらかじめ特定した区域(河川と湖沼を除く)とされています。

焼骨の形状

焼骨は、形が見て分からないように粉状に砕くこととされています。各散骨事業者が粉骨の工程を必ず設けているのは、このためです。

関係者と自然環境への配慮

地域の住民、周辺の土地の所有者、漁業者などの利益や宗教感情を害さないよう、十分に配慮することが求められています。また、プラスチックやビニールなどでできた副葬品を海に投下するなど、自然環境に悪い影響を与える行為をしないこととされています。散骨のときに一緒に流すものについて、事業者から説明があるのはこのためです。

利用者との契約

契約について、次のような取り組みが示されています。

安全の確保と実施状況の公表

海洋の場合は、教育訓練を受けた従事者と補助者を配置し、ライフジャケットなどの安全装具を確保するなど、参列者の安全に十分配慮することとされています。また、散骨の件数や場所などの実施状況を年度ごとにまとめ、ホームページなどで公表すること、その際には亡くなった方を含めた個人情報の扱いに十分配慮することも示されています。

事業者を選ぶときの確認ポイント

ガイドラインの内容を、申し込み前の確認事項に置き換えると、次のようになります。

  • 約款や規約が公開されているか:キャンセルや天候による延期の扱いも確認できます。
  • 見積もりと明細が文書で出るか:粉骨料金、追加乗船料、土日祝の加算などが分かれているかを見ます。
  • 散骨証明書が発行されるか:当サイトの比較表に、各社の公式記載をまとめています。
  • 散骨する海域が説明されているか:港の近くではなく、沖合のどのあたりで行うかが示されていると安心です。
  • 船上の安全対策:ライフジャケットの用意や、高齢の参列者への配慮について尋ねておくとよいでしょう。

自治体のルールも確認する

ガイドラインは、関係法令に加えて地方公共団体の条例やガイドラインを守ることを求めています。散骨を行う場所や、遺骨をお墓から取り出すときの手続きについて、自治体が独自の案内をしている場合があります。

たとえば東京都の町田市や八王子市は、改葬許可の案内ページで、散骨は改葬の手続きの対象にならない旨を説明しています。一方で、墓地の管理者や散骨事業者から、埋蔵証明書や火葬許可証の写しなどの書類を求められることがあります。お墓から遺骨を取り出して散骨する場合の流れは、墓じまいから散骨までの流れで詳しく説明しています。

まとめ
散骨を直接定めた法律はなく、墓地埋葬法が想定する「埋蔵」「収蔵」とは別の行為として扱われています。厚生労働科学研究の報告書に収められたガイドラインは、粉骨、海岸から離れた海域での実施、関係者や環境への配慮、文書での契約、散骨証明書の交付などを事業者に求めています。個別のご事情は、自治体や専門家にご確認ください。

出典

いずれも2026年10月31日に閲覧。